第1回サマリー
CDSFR主催・第1回サイエンスコミュニケーションウェビナーの当日レポートとなります。(当日開催されたウェビナーのうち一部分のみのご紹介です。)初めての開催でありましたが、皆様のおかげさまで大成功に終わりました。CDSFR設立に多大なるご協力を頂きました財満先生、ウェビナーのポスターを掲示して頂きました各高校様、ご参加頂いた皆様、誠にありがとうございました。
CDSFR代表・ウェビナー司会進行役 三浦綾音
2021/04/17(土)開催
第一回タイムテーブル
3:00PM
ウェビナー開始
3:00PM-3:05PM
開会のご挨拶
3:05PM-3:20PM
財満教授の研究内容についてのお話
3:20PM-3:45PM
パネルディスカッション
3:45PM-3:55PM
質問コーナー
3:55PM-4:00PM
閉会・次回予告等お知らせ
近畿大学農学部教授
財満信宏教授
血管疾患(動脈硬化・腹部大動脈瘤)の発症機構の解明と予防・治療法の確立を目的とした研究を主に行っています。一般的な病理解析、脂質生化学・細胞生化学的手法のほか、質量分析イメージングを用いた代謝物イメージングによって、代謝物の「分布」に注目した解析を行っている点に研究の特色があります。様々な組織の代謝物の分布を可視化していると、多くの代謝物が特徴的に分布していることがわかります。この特徴的な分布にどういう意味があるのかも生物学・病理学・栄養学的な視点から研究しています。
当日の雰囲気
参加者の皆様に一言ずつ自己紹介をして頂いた後、財満先生にユーモアを交えながら、『面白い!』という言葉をキーワードに、研究の楽しさや面白さから、私たちの人生のヒントになる発想まで、様々な興味深いお話をして頂きました。参加者の皆様からも『面白かった!』『研究者って楽しそうだと思った!』など、ご好評を多数頂きました。
パネルディスカッション
*本文は、質疑応答の内容を三浦がまとめたものです。
なぜ研究者の道を選ばれたのですか?
”絶対に研究者になる、という感じではありませんでした。ただ、小学生の頃ゲームに夢中だった私に祖母がかけた、『ゲームをする方じゃなくて、作る方にならないとダメ』という言葉をずっと覚えていました。研究とは教科書を作る側の作業ですから、教科書を学ぶだけではなく、教科書を作るのも楽しいかもしれない、と思ったからかもしれません。”
研究される中で苦労される事はありますか?
”好きな事(研究)をしているので苦労も楽しいのですが、研究費にはいつも苦労します。膨大な研究費は自分で集めてくる必要があり、研究費を出してもらうために書類の中で、自分の研究の魅力・重要さやこれまでの研究実績などを上手に語らないといけません。それに、書類を書けば良い訳ではなく、勝ち抜いていく必要があります。”
研究される中でのメリットは何ですか?
”やはり好きなことができるという点です。その上、研究で世界中色々な所に行き、色々な人に会うことができます。また、自分の知識や技術が困っている人の助けになる時があり、真実が一番大事なので価値観がシンプルで対立が起きにくいです。さらに、面白い事をしていると世界中から連絡がきます。南アフリカ、タイ、スペイン、アメリカ等の研究者と共同研究したことがあります。あと、転勤が少ないです。”
研究はどのように進められるのですか?
”研究の基本はまず仮説を立て、実験などで検証していく事です。この中で、自分にできないことは他の人に頼ったりします。例えば脳波を別の大学の研究者や海外の研究者に頼んでとってもらったり、企業の方に頼んで疾患を予防するサプリの試作品を作ってもらい、それを売ってくれる人を探したりします。”
研究者あるあるを教えて下さい
”色々ありますが、『労働基準法(1日8時間労働)を守って下さいね』と言われると困る、というのがあります。研究を仕事だと思っていないので、『夢中になると法令違反になるのか...』と(もちろん法令を順守する気持ちはありますが)。別の側面からだと、研究は一番以外は基本的に無意味になってしまいます。世界中にライバルがいるので、自分が寝ている間に海外の研究者に先を越されてしまうとそれまでにその研究にかけてきた労力と年月が全て水の泡になってしまいます。朝から始めて、夢中になって、気がついたらものすごく時間が経っていた、というのはよくあります。”
研究者になる事・研究者の生活はどのようなものですか?
”プロの研究者でやっていくには、大学(4年間)、大学院博士前期課程(2年間)、大学院博士後期課程(3年間)まで修了することがほぼ必須になってきます。大学で9年間、30歳手前まで学びます。大学教授になるまでのルートとして、博士研究員、助教、講師、准教授、教授とあります。基本的には研究、好きな事をやっていれば良いので大変幸せな時間ですが、自分の研究の面白さや大事さをヒトに伝える努力を怠ると仕事を失ってしまいます。研究は伝えないと『このヒト何やってるの?』と、ヒトには理解してもらえません。なので研究しながら人に伝えるという力をだんだんとためていきます。教授になると好きな事をしていれば良い訳ではなく、社会還元といったことも言われ始めます。なので、若いうちに努力しているとヒトに伝える技術が身につき、後々できる事が増え、色んな世界が広がっていきます。皆さんぜひ今のうちから頑張って行って下さい。”